コントロール･ルームに置かれたソファーに座っている。三人で、今録音し終えた曲を聞き返している。

面白い前奏だ。たった４小節の中に飛躍的な動きが入り込む。それで気付くともう、本題に入っている、そういう曲だった。

「これだ！」と松村さんが喜んでいる。

トラック・ダウンが始まった。作業を進める内に問題が発覚する。violinがずれているのだ。下降音型の一部、多分B（ベー＝シ♭）がリズムも音程も悪い。今までは他の音に埋もれて気付かなかったのだが、トラックを整理するうちに耳に付くようになったのだ。作業が中断される。

協議の末、violinだけ録音し直すしかないだろうとの結論に至る。

それで三上さんと私の二人で、また録音しに行くことになった。

「あのviolinは猫さんでしょ？」と三上さんに訊くと、うん、と答えが返ってくる。「いつ録音したんですか？」と訊ねると、正月からだと言う。

それを訊いた私の脳裏には雪景色が浮かんでくる。一面雪で覆われた山形市街だ。その頃山形にいたのだと思っている。

ところが思っているだけでなく、今、私の運転するジムニーに三上さんを乗せて、その山形市内を走っている。真っ白な雪の道を走行している。

これからもう一度violinを録音し直そうと、目的地へ向かっている最中なのだ。

２０１０年３月２７日

こんな夢を見たことをずっと忘れていた。覚え書きだけは残されていたのだが、見返すことなぞ無かったのだ。随分経った12月、残された覚え書きに目を通し驚く。先月末11月24日発売のアルバムに収録されたSNOW CHILD。編曲は依頼のあった7月に行っている。夢を見た３月の時点でSNOW CHILDなる曲を私は全く知らない。ましてや編曲を受けることになるなど予測不可能だ。ところが偶然、この夢の中の曲と一致している。尤もviolinは使っていないのだから、一致とは思い込みでしかない。ただ解釈として、この夢を忘れていなかった、自分で気付かず、夢をなぞろうとしていた、と考えることはできる。

事象の順が入れ替わっている。SNOW CHILDができた後、この夢を見たかのように。

夢とは不思議なものだと思う。2010年12月