便器に大便が沈んだままになっている。

太く長々とした便である。少し溶けて、水の溜まった部分が茶色くなっている。前に入った姉が流し忘れたのだろう。

ズボンを下ろし、私が便座に腰掛けている。

広いロビーにも感ずるが、そこは老舗百貨店のように天井の高い、高級とんかつ屋の席なのだ。大理石の床、柱。かちゃかちゃと、食器やナイフ、フォークの発てる音が響いている。

隣は二人掛けテーブル席で、中年男性客が一人、とんかつ定食を食べている。真向かいの四人掛けテーブルには夫婦と思われる中年の男女が席に着いている。私だけここに、便座で座っている。

これは恥ずかしいと思い、周りに気付かれないよう下ろしたズボンを上げようとする。排便を済ませた後、まだ尻を拭いていなかったが、もはやそれどころではない。こんなところで尻を拭く姿勢になぞなれやしない。こっそり、ズボンを上げてしまうしかない。幸い外套を羽織ったまま用を足していたので下半身は隠されている。

ずるずるとズボンを上げていくが途中で引っかかってしまう。義理の兄にもらった防寒仕様のズボン下が下着を巻き込んで旨く履けない。

こんな一流店なのに、どうしてこんな所がトイレなのか。周りみんなが食事をしているのに、私だけが便座に腰掛けている。身動きがとれなくなっている。

2009 12/11

「気候は、とっても寒くなってきました、ズボン下は必要かもしれません。」

N.Yからメールが届いたのはこの夢を見た後の12/11、日本時間午前10時。

「あんた、ヒートテックのズボン下余ってるけど、履く？」と姉からメールを貰ったのはその日の午後。義理の兄が履かなくなったものをくれると云う。つまらぬ一致である。

便が出てくるのは犬の所為だろう。子犬のキツミが廊下に糞をする。それを拾い、トイレへ投げ捨てる。偶に流し忘れ、水が茶色くなっていた。

義理の兄の好物がとんかつであると、この頃既に知っていたかどうかはあまり記憶にない。

この時期の私の暮らし（カナエサンが出て行った後の、宙に浮いたような一人暮らし...)とN.Y行きへの不安の表れか。暗示的と云えば暗示的だろう。

N.Yで食事した店はどこも、この夢の中のよう、天井が高かった。

2010 12月