手書き遊び

突然現れる遠い昔の同級生。今頃ヨシハラくんと遊んでた。

小学校の同級生、ヨシハラくんとふざけていたら、彼はどうやらちょっと妊んだようだ。私も同じ可能性がある。

私とヨシハラくんはまだ子供だし、互いにそういう行為をした訳でもない。それにふざけあっていたのはついさっきの事だし、どうして妊娠しなければならないのか、分からない、という一方で、よくこうなる、とも思ってる。

こうなるとなるべく早いうちに生んでしまう方が良いと聞いている。

ヨシハラくんには出産も遊びのようで、「うんでしまうぅー」とか言って笑いながら例の、トンネルへ入り込もうと私を誘う。

そのトンネルというのは、とても狭い通路だ。地面の下をわずかな間で抜け出る仕掛けだ。木枠で補強されているけれど、そこをでんぐりがえしの要領で、無理な格好で通過する。

私はそこを通るのが嫌だった。やったことがあるようなのだ。ちょっと苦しかった記憶がある。抜け出る直前の圧迫感、丸めた身体をうまい具合に元に戻すきっかけ、リズムが掴み辛かった気がする。

ヨシハラくんは剛胆だ。そんな嫌な事ですら遊びと思っているらしい。「穴」の直前で躊躇って「やっぱりやめる」という私を「おかしい」と笑ってる。

それでなのか、方法を変えたらしい。彼は股を広げて仰向けに寝ころんだ。その格好でけらけらと、まだ笑ってる。

私は助産婦が必要と考えた。それで廊下にいる人へ目をやると、一人、掲示板を見つめている少しだけ目立った女性がいる。若い女性だ。スカートを履いていたので初めは気付かなかったが、それはフミコさんだった。暫く会わないでいたら、清楚に綺麗になっていた。顔はそのままなのだけど、髪型を変えて、脚もすらっとして、ちょっと女優さんのようなのだ。

そのフミコさんを手招きする。

「チョット、チョット。」

助産婦役を頼むのだった。

快諾した彼女はヨシハラくんの様子を見て準備に取りかかる。

「何かメモ用紙みたいなもの、大量にありますか？」と私に訊いてくる。それで私は部屋の隅、奥の四畳半の押し入れ、開けっ放しの押し入れの、中段にあった雑紙を漁りはじめる。

以前カナエサンと「手書き遊び」をした時に使った罫線入り正方形メモ用紙の束。その裏側ならまだ使えるんじゃないかと思ったのだ。

随分ほったらかしにしていたので、あちこちに染みが出来ている。四隅がそっくりかえって、汚れている紙も多い。そして思っていたより書き込みが多かった。裏も、使われているのがほとんどだ。

私が手間取っているとフミコさんが様子を見に来た。

「こんなんでいいかな？」と訊くと、彼女は黙って私のやっていた仕分け作業、何も書かれていない裏側のある紙を探す作業を手伝ってくれる。

この大量のメモ用紙をどう使うのか、それはさっぱり分からない。がさつなフミコさんで大丈夫なんだろうかと不安になってきた。

起きてから雨の中高円寺へ向かう。歩いて青梅街道を歩いていた。すると突然夢を思い出す。忘れぬ内に書き留めようと思ったが手帳を持ってきていない。コンビニで安いメモ帳を買おうとするが、メモはまだしも、ペンが気に入らない。いくら臨時とはいえ、こんなペンじゃ買う気もしない。携帯電話のテキスト入力のほうがましだと判断する。

夢をみたのを忘れていても、ひょんなことから芋蔓式に、するすると引き出せることもある。

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2008年5月31日