１９９７年６月１８日
ポラが去って12日目
街角にテレビがついている。
消そうと思うのだけれど、消せない。
コントローラーのあちこちを押してみるが、スイッチは切れない。
コントローラーを間違えているかもしれないと思い、ふとみると、いくつもコントローラーがある。
もう私も行かなくてはならないのに、テレビを点けっぱなしでここを去る事はできない。
OFFを押しても変わらない。このリモコンは、このテレビのものではないようだ。
透き通った、宇宙船のおもちゃのようなコントローラー。
あちこち押すが、OFFは分からない。
裏の変な位置にメインスイッチがあるようだ。
街角が、奥の四畳半になる。
私が途方にくれていると、知らない若い夫婦が赤ん坊を抱いてやってくる。
私がテレビを消そうと躍起になっているのを見て、自分達がここにいるから、テレビは点けっぱなしでいい、と言う。
私はその若い夫婦に、いつも難しい機械を使う仕事をしているのに、こんなテレビが消せないなんて、と負け惜しみを言う。
ポラ
ポラが無邪気に私を舐めてくれる。
私はふざけて、子犬の時やったように、ポラの口の中に息をふうっ、と吹き掛ける。
ポラは喜んでか、ますますぺろぺろし始める。
泣いても泣いても、ポラが涙を舐めていく。
鼻水と涙とポラの唾液で、顔がぐしゃぐしゃになっている。
橋の助
私が浴衣を着ている。
もうすぐポラが去って行くと分かって悲しんでいた。
父が、そんな私とポラを写真に撮ってくれる。
それで、ポラは私の鼻をペロペロ、ペロペロ、ずうっと舐めるのだ。
ポラが舐めれば舐めるほど私は悲しくなって行き、涙がポロポロ出て来る。その流れる涙をポラがまたぺろぺろ舐めるものだから、止まらなくなって、私は泣き続け、ポラは舐め続ける。
奥の畳の部屋でポラとそうしていると、人がやってくる。今日は正月のような、特別の日。小金井から姉もやって来る。とりあえず、私は泣くのをやめ、ポラと離れる。
みんなと同じ所で座るポラ。
ポラは元気そうで、もうすぐ別れなければならないとは思っていない様子だった。
でも、そうではなく、ポラ自身その事を知っていて、それでもいつもと変わらぬ態度をとっているのだった。
そうしてまた悲しくなってきて、泣き始めてしまう。
一家が畳の部屋に集まって、御膳を囲んでいる。ポラも一緒に。
1997 6/18 昼
