10代の終わりから20代初めにかけて、実家の東側に増築された祖母の居住する離れに叔父のミノルさんが同居していたことがある。実家にまだ自家用車の無かった時代だ。父が初めて車を買うのはもっと後である。そんな頃、敷地の一画にミノルさんの車が駐められていた。ミノルさんは車を持っていたのだ。ただパブリカではない。スバルレックス550だった。（だから何故夢の中でそれがパブリカになっているのか自分でも解らない。トヨタ・パブリカを選択している意識とは何なのか。）

その頃既にカナエサンと付き合いだしていた。彼女の実家は遠く離れた東京西部で、夜遅くなるとよくミノルさんのスバルを借りて送り届けたのである。

ミノルさんは快く車を貸してくれたが、私にはどこか負い目があった。そのくせ背に腹は代えられず、夜遅くなって直通の終電を逃し、結局鍵を借りに「隣の家」へ頼みに行くのだった。

父方の親族への印象。これは多分に父の気質が影響しているのだが、母方の親族と比較して親近感が薄い。いや、直截的に言えば、私の父への嫌悪が父方の親族へ暗い影を落としてしまうのだ。

その点対照的なのが「オヂちゃん」である。母方の、母の弟にあたる叔父である。

ミノルさん＝父の弟 / オヂちゃん＝母の弟

この対称を意識できたのは、この夢のお陰である。

ミノルさんが夢に出ることなど今まで無かったはずだ。

何故急にミノルさんが引用されたのか。（何故今頃父方の叔父が素材として選択されたのか。）

今まで曖昧にしていた父と私との関係、父とあまり拘わりたくない、という感情、父との確執が、もうその飽和点を迎えていて、現実に父を受け入れなくてはならない、という気持ちの不安がミノルさんを「呼んだ」のかもしれない。

当時のミノルさんが独身であることもまた重要な意味を持つだろう。それは、カナエサンと別れて、私が「いい歳をした独り身」になったこと、すなわち、あの頃のミノルさんは現在の私自身なのである。

暗示的と言わざるを得ないことには、この夢を見た2010年3月から2ヶ月後、父は介護施設へ入居することとなり、結果的に私は「母親と同居する独り身の50代男性」になってしまったのだ。（2010 11月現在）

全くこれは正に「祖母の家に同居する独身の叔父＝ミノルさん」と重なっている。当時のミノルさんは今の私の歳くらいではなかったか。

もっとも予知夢などと思うべきではない。単に、事後的に、見た夢を解釈してるに過ぎないのだから。

ところで「黒の日産ティーダ」とは、2009年の夏まで父が所有していた車である。

2009年7月頃「駐車場代が払えなくなった。」とカナエサンが言い出した。カナエサン名義の車、白のジムニーは隣のイトザキサンの駐車場を借りていたのだ。それでジムニーを手放すか、あるいは父がもう運転することの出来なくなった車、自宅の駐車場に駐めてあるティーダを退けて、そこにジムニーを駐めさせてもらうか、どちらかを選ばなくてはならなくなった。

事情を話し、ティーダを手放すことに同意してもらう。

夢の中でパブリカが顕れる理由。「色褪せた白い小型車」としての旧車パブリカは確かにジムニーを彷彿させる。だがそれも自身の誘導による解釈だろう。単に対称性と理解するに留めるべきかもしれない。

黒の日産ティーダ / 白のトヨタパブリカ

8月にカナエサンが別れたいと言い出した時の理由の一つ、それは経済問題である。

「ティーダの売却により空いた自宅駐車場にジムニーを駐め駐車料を節約すること。」

私にとって「（売却された）黒の日産ティーダ」とは、カナエサンとの別離の兆しに値する。

2010 11/19

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