練馬インター

久しく会っていなかった。彼女は何か楽しそうに話している。

真夏の昼間。がらんとしたインターチェンジ

青空と白い雲

目に見えない乗り物に乗って来た。

私は座った状態で地面ぎりぎりに浮いている。

練馬インターの標識

右折すれば練馬豊島に行く。

右折しそこなう。

次の右折レーンでも練馬方向へ行ける。そう思って、次を右折する。

その道は左へ行くと立体になって別の方向に行ってしまうが、脇をすぐ右折すれば、さっきの道に合流するはずだ。

地面に沿った道は舗装が荒い。臨時の緊急避難道のよう。

芝生との境があいまい。いくつもの細い道が枝別れしている。確かに何本か、あの曲がり損ねた道に合流しそうなのだが、どれがその道なのか方向感覚が狂って、紛らわしく、判断出来ない。で、なんとなくそのまま行ってしまう。

廃水路のような小川に沿って走る。

奇麗な小川のようで、そうでもないのかもしれない。工事のために出た汚水を逃がす用水路に思える。黒く大きならんちゅう魚が浮いてる。それは油の塊かもしれない。

走っていた道がトンネルに向かう。これは違う方へ行ってしまうだろう。

方向を修正するには小川の対岸の細道に乗り代わらないといけない。

小川の縁のコンクリート部分を歩く。すると段々その路肩が狭くなってくる。いくつか対岸に渡れそうな部分があるが、確実に行けそうな場所を捜すうちに、ついに路肩が無くなってしまった。

来た路肩を戻り、さっき渡れそうだと思った所に行く。用水路をまたぎ、赤土とコンクリートの地肌が露呈した土手の登ろうとするが、滑ってうまく登れない。見た目より急で用水路から土手を上がるのは大変だった。

私は諦め、また用水路を渡り直すが、飛び移ったとき失敗して川に落ちる。片足がずぶ濡れになってしまった。もうすこし戻って楽に渡り対岸へいかないと。

程よい場所を見つけ渡るが、もう土手と用水路は、始め見たほど穏やかなものではなく、急勾配の切り立った土手に、幅は狭いが深く澱んだ汚水を流す排水坑だった。

全身を排水坑に浸し、立ち泳ぎで対岸に手を延ばす。やっとかかった手が滑る。

足掛りを見つける。無気味な形をしたコンクリートの塊。何の目的に作られた物なのかわからない。有機的な形のそれは、規則的に穴があいていて、動物の巣のような、気味悪いものだった。それにしがみついていいものかどうか躊躇する。足掛りにするには丁度良いその無気味な穴を恐る恐る覗く。爬虫類の足のような、鱗のついた三本指に別れる足が沢山見える。良く見ると、それはカモを保存しておくポットのような物かもしれない。

捕まえられたカモが逆さにつる下げられて、それを保存しているのか醗酵させているのか、そんなポットだった。私はそれにしがみついてよじのぼる。するとどこかで低い男の声が響く。警告なのかどうか、ともかく、低い無気味な声で。

1997 7/15 or 16

練馬インター